声楽のジャンル
2026/6/14
一口に「声楽」と言っても、実際にはたくさんのジャンルがあり、それによってアプローチが変わります。
国によっても違いますし、歌曲やオペラなどによっても変わります。そして同じオペラでも時代が変われば求められる声や技術も変わります。
ではどのような作品があり、どのような声や技術が求められるのでしょうか?
イタリア
イタリアは特にオペラが発展した国です。時代によってはイタリア以外で作曲された・イタリア人以外が作曲したオペラであってもイタリア語で書かれている作品もあります。
例えばモーツァルトはオーストリア人で、オーストリアや、時にはチェコなどで初演されたオペラもあります。
ドイツ語の作品もありますが、やはり多く上演されているのはイタリア語の作品。チェコで初演された「ドン・ジョヴァンニ」もイタリア語の作品です。
イタリア歌曲も外せません。トスティやドナウディといった作曲家は主にイタリア歌曲が歌われています。特にソプラノ歌手やテノール歌手によって歌われることの多い彼らの作品は、他と比べても抜けるような明るい高音が特徴です。バリトン歌手やバス歌手においても、やはり爽快感のある明るい響きが求められていると言っていいでしょう。これはオペラにおいても同様に求められるものです。
ドイツ・オーストリア
ドイツ音楽はピアノなどでも特に演奏される機会の多い国で、いわずもがな音楽大国です。
声楽においてはオペラ・歌曲・オラトリオ・合唱曲・オペレッタなど、およそ考えられるすべてのジャンルが人気作といえます。
特にドイツ歌曲(ドイツ・リートと呼びます)は学校の音楽の授業でも習われるほど聴く機会が多い(シューベルトの「魔王」「野ばら」)。音楽関係者が「クラシックの歌」と聞いてまず思い浮かぶのは、このドイツ歌曲がほとんどだと思います。
オラトリオは聖書を音楽にした作品です。オペラのように演じることは少なく、どちらかというと長い合唱曲として捉えられることが多いようです。英語のオラトリオなどもありますが、やはり演奏が多いのはドイツ作品の方です。
オペレッタはミュージカルの前身とも言われる、オペラよりも「一歩先の時代に進んだ作品」です。派手な音楽にダンスなども組み込まれ、なおかつセリフを挟んで話が進みます。フランスで発展しましたが、現時点ではドイツやウィーンのオペレッタの方が演奏機会は多いように感じます。
ドイツ語がかっちりしている分、響きが硬く、音の運びもきっちりしていることが多いです。イタリアと比べると響きが暗く、なおかつかなり重厚感のある声が求められます。
フランス
フランスはオペラと歌曲、そしてオペレッタが盛んです。
フランス作品はとにかく鼻に少し抜いた、甘さの強い音色が特徴です。
イタリアの高音が鋭く抜ける音だとするならば、フランスの高音は甘く漂い消えゆく音と言ってもいいでしょう。それを前提に書かれた作品も多いので、イタリア式に鋭く出してしまうと余韻が台無しになることもありえます。
ロシア等スラヴ系
ロシアを筆頭にチェコやポーランドにも歌の作品は多々あります。
チャイコフスキーやムソルグスキーなどを輩出したロシアは、重くはないが響きが暗く、しっとりというよりは若干粘り気のあるような音質が特徴です。
それに呼応するかのように作品自体もどこか薄暗いものが多く、絶望を感じさせるというよりは気づいたら暗くなっているような音楽です。
チェコ作品はどちらかと言うとはっきりしていて、暗い作品は派手な音楽が、歌劇は牧歌的な音楽が特徴といえます。とは言いつつも音質は暗めで、イタリア作品とは似ているようでやはり違う作品といえます。
個人的には多くの日本人の歌声はチェコ作品にこそ向いていると考えています。
北欧
北欧系の作品は儚い響きのものが多く、言葉の母音も比較的多くて曖昧で、フランス語に近い発音をします。
しかしドイツ語を心得ている作曲家が多いため、ドイツ語の作品が数多く存在します。ドイツ歌曲の歌い手はどうしてもかっちり歌ってしまいがちですが、そうすると音楽とミスマッチになってしまうので、そういう意味ではとても難しいです。
実際歌い手の声によっても向き不向きが出ますし、細かく突き詰めるとどんどん細かく分類分けができます。
結局のところは指導者が生徒さんの声を聞き、適した作品を歌わせることが肝要だなと思います。